混声合唱とピアノのための『鉄道組曲』

楽曲案内

混声合唱とピアノのための『鉄道組曲』


テノール

志村一繁

今年2月8日、上野の東京文化会館で行った音楽監督・山田和樹指揮による定期演奏会。
その際に委嘱作品として信長貴富さんにより作曲されたのが「混声合唱とピアノのための『鉄道組曲』」です。
その日の最終ステージ、そしてアンコールでも演奏しましたが、最後は客席に繰り出しての大盛り上がり!今でも忘れられない光景です。

コン・コン・コンサートではその中から3曲を演奏します。
以下の番号は組曲全6曲の中での番号です。



混声合唱とピアノのための『鉄道組曲』より

3.「間奏曲」

ふるさとの 訛なつかし 停車場の
人ごみの中に そを聴きにゆく

誰もが知っている石川啄木を代表するこの詩。確かにこれほど鉄道組曲に相応しい詩はないですね。
当時東北からの玄関口は上野駅。岩手出身の啄木にとって、聴こえてきたのが岩手の言葉とは限りませんが、東北の訛りを懐かしく思ったのでしょう。

上野駅構内にこの歌碑があります。なかなか大手を振って観光の出来ない時期なので、駅ナカ観光というのも乙なものですよ。

こんな有名な詩を組曲の中での「間奏曲」という位置に据えるなんて!信長さんのセンスに驚かされます。
また組曲唯一のア・カペラでもあります。

たった9小節の短い曲ですが、誰もをその世界にぐっと惹き付ける素敵な一曲です。
「間奏曲」としたのは、やはり信長さんの慧眼ですね。

4.「上野ステエシヨン」

誤植じゃないですよ!
私、この曲好きなんです。

3.「間奏曲」からattaccaで続くピアノが[f]で始まり、4小節間で歌の始まる[p]まで持っていく。
そして同じ和音で始まる歌の歌詞が「トップトップと汽車は出てゆく」。
この擬音というか擬態語なのか、室生犀星にしか出せないであろう言葉に入っていく、この導入部分に掴まれてしまうのです。

また6/8拍子が、なんか車輪の動きって感じがするんですよねぇ、踊っているかのような。

26小節からはSop.がオブリガートになり、Bas.が主旋律を歌う。この両外声の使い方もうまいなぁ。
そこをつなぐピアノも聴きどころなんです。名手・鈴木慎崇さんにご注目ください!

そこまでの情景から自分の立ち位置、あるいは状況へと変化していく。
ここで「橋の上」という言葉が、元の詩の中にも2回出てきます。
そこを音楽でもリピートして、さらにもう2回聴かせています。
その最後の「橋の上」からオーバーラップして冒頭の「トップトップと~」に帰ってくる。
そしてだんだん遠ざかっていく様をピアノが表現する、なんとも幻想的な終わり方です。

詩の最後の一行、「浅草のあかりもみえる橋」を私は見つけることが出来ませんでした。今や無いのかもしれません。
でも知らないだけで、本当はまだどこかにあるのかもしれません。
どうぞ色々と想像を巡らせながら、駅ナカ観光の際に探してみてください。

6.「恋の山手線」

詩人ではなく、四代目・柳亭痴楽さんが落語の(まくら)として使っていたものだそうです。
私も結構な歳ですが、さすがに名前しか知りませんでした。
すごいところを持ってきたものです。

山手線の各駅名を七五調の詩として、恋愛の悲喜こもごもを面白おかしく綴ったものです。
早い話が小林旭さんの「自動車ショー歌」のような・・・と言ってもこれも古過ぎてわかりませんよねぇ。

曲の解説は、と言いたいところなんですが、もうこれは百聞は一見に如かず、いやいや、どれだけ説明しても一聴に如かず!
聴いて、見て、楽しんで頂ける作品なんです。
2月に初めて歌った時も本当に楽しかった。
我々が楽しみ過ぎて、お客様を置いてきぼりにしないように気をつけます。

「山手線」の読み方は正式には「やまのてせん」なんだそうですが、当時は一般的に「やまてせん」と言われていたそうなんです。なのでその当時のままそちらで歌っています。

そうそう、これを痴楽さんが使っていた時代には、まだ山手線になかった駅が2つあるんです。
一つは今年完成した「高輪ゲートウェイ駅」ですよね。
さてもう一つは?
それを探すのも楽しみの一つとして聴いてみてください。



鉄道オタクを自称している、我らが常任指揮者のキハラさん。
私は鉄オタではないのですが、アニメオタクとしてどうしても外せないのが「銀河鉄道999」。
999の車掌さんよろしく、我々を安全で楽しい旅に導いてくださることでしょう!

『鉄道組曲』は信長さんが目論んでいた通り、もうすでに東混の「持ちネタ」になりつつありますよ~。

詳細HPはこちら↓

https://toukon1956.com/?event=con-con-concert2020


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