蜂が一ぴき…

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アルト

小野寺香織

いよいよコン・コン・コン・コンサートが近づいてまいりました。

NHK全国学校音楽コンクール、全日本合唱コンクールの課題曲を中心にプログラミングされているわけですが、今年はナカナカ面白いラインナップになったように思います。皆さんはどの作品に興味をお持ちでしょうか?

今回はその中の一つ『蜂が一ぴき…』について少し解説&たっぷりの私見を。

この曲は宮沢賢治の『鈴谷平原』の中から抜粋した形のテキストに作曲されています。亡くなった妹とし(とし子)の魂の行方を求めた旅を描いた『春と修羅』の『オホーツク挽歌』の章に収められています。
この『蜂が一ぴき…』、林光先生は絶妙な作曲をされています。

コンクールとなると楽曲解析を突き詰めて行く事も大切になってきます。 音楽作りの際には「楽しい」という言葉を「明るく」歌ったり、「死」という言葉は重々しく歌ったり「言葉に引っ張られる」表現から「この言葉を使って何を表現するか」、「ここは『死』に抗うように、むしろ明るく!」とか色々考えたりも。

ところがこの曲はその音を歌うだけでその殆どが表現できるように作曲されているのです。 例えば「♪たのしくゆれている〜」のところ、ちょっと歌ってみてください。あっけらかんとした楽しさを感じる音型にはなっていません。そしてそれはその後に続く「♪うれいや悲しみに対立するものではない」のテキストに呼応しているかのようです。

宮沢賢治はこの樺太での旅を通して「とし子は亡くなって遠くへ行ってしまった。けれども同時に生きとし生けるものすべてにとし子を感じることが出来る。」と思い始めます。

もちろんその気持は刹那刹那で揺れ動きます。ですから心の痛みのメタファーのように新しい蜂がまたやってきて、チクリと痛みを残していきます。 その痛みの感覚をくっきりさせるかのようにユニゾンになりますがdim.を伴って痛みの生々しさはありません。

さて、この曲は合唱団じゃがいもさんによって初演されました。ご存知の方もいらっしゃるかもしれませんが、こちらの合唱団はメンバーのお子さんたちも練習所にいらしてリハーサルを聴いたり、楽譜をのぞき込んだりしながら過ごされ、いつの間にか曲を覚えて一緒に歌ったりするのだそう。

そういった背景からか、この「蜂が一ぴき」のテキストは、元の詩にある「抛物線の図形」「荘厳ミサや雲環」「三稜玻璃」などの難しい言葉を使っていません。林光先生は子供にもわかる言葉を選び、一つ一つ視線が移っていくような動きを伴って流れ、ワクワク感を持って曲は進んでいきます。

また元の詩では「♪宗谷海峡をわたる」の後も詩が続いています。 それでもこの曲ではここで旅が終わります。 続きの詩を知っている人、更に「噴火湾」まで考えちゃう人、それでもこの曲は終わります。しかもユニゾンで。とても愛らしいメロディで。

大人の表現、子供の表現、背景を知っている人、知らないけど違うアプローチを持っている人。そこには「みんな違ってみんないい」by みすゞ的な表現の幅広さが生まれることでしょう。コンクールでそれがどのように扱われるのかも興味深いです。
そして私達の演奏はどのように皆さんに伝わるのでしょうか。ドキドキ。

最後に、この曲好き。そして『光ちゃんはかわいい』。

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