推し(というより東混で歌いたい)女声合唱曲を語る。

大沢結衣

ソプラノ

大沢 結衣

東京混声合唱団に入団して5年目。途中約10ヶ月の産休・育休を挟み、しれっと復帰しておりましたソプラノ大沢です。元気です。

さて。最近東混では女声合唱曲を取り上げる機会が増えていますね。藤岡マエストロ定期の「三つの抒情」、大井マエストロ定期の「一つのメルヘン」、先日のコン・コン・コンサートでは「Lied」「定点観測」など。美味しい曲ばかりで至福の時が続いております。
そう、私は女声合唱が…大好きなのです…!!!!

私は中高一貫のキリスト教系女子校に通っていましたので、合唱人生は女声合唱からスタートしました。ちなみに母校には合唱部は存在せず、聖歌隊という奉仕活動を主とした団体に所属していました。合唱に加えてハンドベルの活動もあり、コンクールや学校行事だけでなく訪問・奉仕演奏などで6年間常に本番に追われる生活を送っていました。

高2の全日本合唱コンクール関東大会の会場にて。

そんな中高時代を過ごした私にとって、女声合唱とはどんな存在なのか?それは原点であり、なくてはならない存在でもあります。
元々は器楽出身なので歌うことにそれほど興味はありませんでしたが、誰かと一緒ならば歌うことが楽しい時間になると教えてくれたのは女声合唱でした。私の心の支えのひとつです。
そんな女声合唱を東混で出来るなんて…もう、夢みたいですよね。ありがとうございます。
近頃では、東混だったら私の好きなこの曲をどう歌うだろう。アルトはこんな音かな?メゾはこんな音かな?ソプラノはこんな音かな?と色々妄想するのが楽しく、歌ってみたい曲ばかりが増えていくので困っています。笑
ただ胸の内にしまっておくだけだとウズウズしてしまうので、推し曲のうち厳選した4曲を紹介(という名のプレゼン)したいと思います!
やや趣味に偏りは見られますが、へ〜そんな曲あるんだ〜と興味を持って頂ければ幸いです。それではLet’s go。

無伴奏女声合唱のための村山槐多の詩による「青色廃園」より 2.宮殿
作曲は西村朗さん、詩は村山槐多。タイトルは詞の原題の”宮殿指示”から。
中学1年の時に聖歌隊の定期演奏会で演奏しました。この曲は冒頭の「みなさま!」という印象的な呼びかけから始まります。これを聞いた多くのお客様がパッと顔を上げてびっくりしていた記憶が残っています。基本的には2声がほぼ同じ旋律を歌い、アルトがソプラノを追いかける形式で続いていきますが、ズレ方が肉薄しているため、歌っていると近距離でこだまが返るように耳が”ビリビリボワボワ”するのです。そしてこの曲にさらに衝撃をプラスしてくれるのが、突然登場する力強い足踏み。聞いていても面白いと思いますが、歌っている方はもっと面白いんですよ〜。
村山槐多による詩は、滑稽でありつつもギラギラとした華やかさに思わずゾクっとしてしまう感じ。東混ならその歌詞をより引き立たせて、大人の色気もプラスして背筋をゾクゾクさせてくれそうです。うーん、たまらんでしょうね!!

合唱データバンクこと同期の音葉ちゃんから教えてもらうまで、作曲者が西村朗さんだと知らなかったというオチまでがこの曲の紹介です。なんたる不敬…

さてここから全く毛色の違う作品へ。語り出したら止まらないのでサクっと行きます。

F.メンデルスゾーン「3つのモテットOp.39」
メンデルスゾーンは混声合唱でも好きな曲がいっぱい。アカペラの野に歌うシリーズとか、宗教曲ならPaulusやEliasやLauda SionやPsalmsなど。でもやっぱり選んでしまう女声合唱…名曲中の名曲です。私がメンデルスゾーンの虜となった作品でもあります。
大学1年の合唱の授業で取り組んだことがあり、秋に行われる声楽科の合唱演奏会でも歌いました。Veni Domine(主よ 来て下さい)、Laudate Pueri(しもべらよ 主を賛美せよ)、Surrexit pastor bonus(よい羊飼いは蘇られた)の3曲で構成され、途中でソロによる重唱も入っていて聞き応えのあるモテットです。伴奏はパイプオルガン。
和声の美しさはもちろんのこと、パートそれぞれに与えられているメロディにはロマン派宗教曲の良きところがギュッと凝縮されています。芯の通った豊かな声で歌うイメージがあったので、自分が精神的にも成長した頃に歌いたいなぁと思っていました(それっていつになるだろう)。

B.ブリテン「キャロルの祭典」
言わずと知れたブリテンの名曲。私がクリスマスに歌いたい曲ベスト3はバッハのマニフィカトとヘンデルのメサイア、そしてこのキャロルの祭典…!!!
1曲目と11曲目以外の歌詞は中世の英語詩が使われており、救い主キリストの降誕を祝い喜ぶ様子が世俗的に描かれています。元はウェストミンスター大聖堂の少年合唱団のために作曲されたというのもあり、旋律がピュアで素朴で美しい…。時にマリア様のように、時に天使のように、声色に”母性”と”無垢さ”の対比をつけても面白いかなと個人的には思います。伴奏はハープですがピアノでも十分に演奏効果があります。
ちなみに中学3年生の時にNコン・全日本コンの自由曲で伴奏しました(抜粋3曲)。随分と難しい曲を弾いたものです。

さて最後の推し曲はこちら。
「風になりたい」
平成17年度のNコン高校の部の課題曲。なんと寺嶋陸也さん作曲であります!課題曲なので混声や男声版も存在しますが、私が歌ったのは女声版でした。それぞれに味わいがあり、聞き比べて楽しむのもまたNコンの醍醐味。
同期の明日香ちゃんと出会ったばかりの頃に、この曲が好き!ということを彼女から聞いてとても嬉しくなったのを覚えています。好きな合唱曲を共有出来るって、幸せなことですよね。東混に入ってよかったと思う理由のひとつでもあります。
この曲はとてもシンプルなアルペジオから始まるのですが、わずか1小節半の前奏でその後の演奏が決まると言っても過言ではないと思います。コンクール当時のピアニストは私の同級生で、技術はもちろんのこと非常に繊細な表現力の持ち主でもありました(のちに桐朋のピアノ科へ進学)。彼女の作り出した1小節半は、合唱にも大きな影響を与えていたのかなと思います。ピアニストの存在の大きさを意識するようになったのもこの頃でした。
そしてこの年のNコンのテーマは「はたらく」。この詩において「はたらく」というのは労働という意味ではなく、作用の意味だそう。誰かの背中を支えて、一歩踏み出せるようにそっと「はたらき」かける。そんな優しい人になってみたいですね。
「海の不思議」の作詞者でも知られる川崎洋さんによる詩が本当に素敵なので、是非読んでみて下さい。

ちなみに私が初めてNコンに出たのは中学1年生の時で、その年の課題曲「変」も寺嶋さん作曲でした。寺嶋さんといえば東混では八月のまつりなどでご一緒させて頂いているのですが、まさか同じステージに立てる日が来るとは…合唱を続けているとこんな事もあるのですね。出会いに感謝です。

いかがでしたか?
いやいやあの名曲が入っとらんがな…と思った女声合唱クラスタのあなた!是非教えて下さい。一緒に語り合いましょう!私もまだまだ紹介し足りない曲がありますので。

いつか自分の推し曲を、東混で演奏できたらもう思い残すことはありません。三つの抒情の時にも言ってた気がするけど。
東混内でもきっと推し曲を隠し持っている人がいるはず…私には分かる…
機会があれば、団員同士でプレゼン大会などをしてみたら色々な発見があって面白いと思うんですけどね。やりませんか?笑

長々と失礼しました。
今後の東混の女声合唱にご期待下さい!

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