ウクライナのお話/髙谷光信

ブログリレー

みなさま!!

今回はなんと、指揮者の髙谷光信さんが記事を書いて下さいました!!

この企画を通して、団員だけでなく、指揮者の方々のことも、知ることができています。

大人版“交換ノート”みたいで、なんだかワクワクしてしまいます…!

髙谷さんに回ってきたテーマは、ウクライナでの「留学時代のエピソード」。

どんなお話を聞かせてくれるのでしょうか?




指揮者

髙谷光信


File11:ウクライナのお話

皆様こんにちは、髙谷光信です。


留学時代のエピソード」ということで《バトン》を受け取りました!

私は京都市出身で嵐山の麓で生まれ育ちました。 母校、京都市立堀川高校音楽科とキエフ市立ルイセンコ音楽院は姉妹校として交流をしていました。お互いにホームステイやオーケストラでの共演もあったので、友人もできウクライ ナは当時から身近な国でした。

京都市とキエフ市は1971年に《姉妹都市提携》が結ばれて以来今も尚、交流が続いております。

2000年、ウクライナ国立チャイコフスキー記念音楽院の指揮科に入学し、 国家芸術家E.V.ドゥーシェンコ教授の門下として4年間学び2003年に卒業しました。
音楽院の学生特権で、キエフバレエ・ウクライナ国立オペラ・ウクライナ国立フィルハーモニーの演奏が全て無料で鑑賞できたことは大きな財産となりました。また《展覧会の絵》で有名な「キエフの大門」も家のそばにありましたよ。

しかし、何よりも素晴らしかったのはドゥーシェンコ教授のレッスンでした。 ロシア・ウクライナ指揮法は一言でいうと《素朴で暖かいもの》です。 それは、技術よりも想いを尊重する内容であったと感じています。
毎週ひとつずつ交響曲を覚えてくる課題は大変厳しいものでしたが、 《ロシア語の勉強、指揮レッスン、一般授業、オペラ、オーケストラ》と 本当に贅沢な4年間を過ごすことができました。

卒業演奏会では、在学中にご縁をいただいた 《ウクライナ・チェルニーゴフフィルハーモニー交響楽団》に演奏をお願いし、 チャイコフスキー:交響曲第5番を指揮しました。 レニングラードフィルを彷彿とさせるビブラートのあるホルンには大変感銘を受けました。

卒業後はそのオーケストラの第2指揮者に就任し、 長年ウクライナと日本を行き来する生活を送ることになります。

2014年ロシアとウクライナの間で起きた《クリミア危機・ウクライナ東部紛争》は音楽界にも大きな影響を与えました。チェルニーゴフフィルのトランペット首席は軍楽隊隊長で あったり、ホルンやトロンボーンも軍楽隊楽員のため練習に来れないこともよくありました。

また、クリミア半島やドネツク地方から逃れてきたヴァイオリン奏者が急遽雇われたこともありました。このように激しい紛争と背中合わせの中でも音楽活動が止まることはありませんでした。そして、私も指揮をすることでしか答えを見つけることはできなかったのです。

2015年、2月の定期演奏会でドヴォルザーク交響曲第9番「新世界」を取り上げました。 当時、さらに紛争が激しくなり《芸術文化予算削減》のため一時的にホールの循環暖房が断たれたのです。外気温はマイナス20度以下です。白い息を吐くリハーサルの舞台は5度くらいでしょうか。
一振り、一振り、、手が空を切る度に指先から悴むのです。 私は楽章間で緞帳を下ろし、重ね着をし、マフラーを巻き練習をしました。 寒さに耐え何とか第4楽章まで入り、あの有名なテーマに入った瞬間、、、
チェロトップ最年長のおじいちゃんが演奏をしながら、 おいおいおいおいと周りを憚らず泣きだしたのです。 私の指示で一旦オーケストラの演奏を止めました。
突然のことで皆も驚きましたが、私が一番驚いたのは、 涙でしわくちゃになったセルゲイおじいちゃんの一言でした。
「こうして、、、こうしてずっと音楽をしていたいんだよ。」と。
それは、決して大きな声ではなかったけれど、 メンバーにはっきりと届く声でした。

しばらく後 「では、もう一度、第4楽章の最初から。」
最後まで演奏したオーケストラメンバーの多くが目を真っ赤にして泣いていたことを私は忘れることはできません。 2018年セルゲイおじいちゃんは勇退されました。

そのオーケストラとも今年で17年目を迎えました。 近年ではピアニストのフジコ・ヘミングさんと共演させていただきました。


また2018年にはヨーロッパでも大活躍のウクライナ国立アカデミー合唱団「ドゥムカ」とベートヴェンの第九演奏会を行いました。なんと!この時は大阪鶴見区のアマチュア合唱団 「アンサンブルつるみ合唱団」の方々も現地まで駆けつけてくれました!本当に楽しかった思い出です!!

そういえば、テーマは「留学時代のエピソード」でしたが、 いつの間にか「ウクライナのお話」になってしまいました。どうぞお許しください。


2019年4月より東京混声合唱団の指揮者に就任させていただき1年が過ぎました。 全国に東混の魅力をお届けできるように務めたいと思います! みなさま、どうぞよろしくお願いいたします。


次は志村美土里さんにバトンを渡します! それでは、テーマは「もしも願いが叶うなら」でお願いします。



なんだか、昨今の環境と重なるものがあって、心が揺さぶられます。

国境を越えて、共感し合える仲間と音楽ができることは、本当に素敵なことですよね。

さて、髙谷さんからの次回のお題も素敵…!

もしも願いが叶うなら

次回はアルトの志村美土里さんにお願いしますよ!

「圧倒的語彙」をもつ美土里さんの記事、どうぞお楽しみに〜!

前回:奥山さんの記事はこちら

次回:美土里さんの記事はこちら

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