『夢の意味』の思い出の意味

楽曲案内

『夢の意味』の思い出の意味


バス

德永祐一


上田真樹さん
初めてお会いしたのは今から13年も前のこと。
もちろん『夢の意味』初演に向けたリハーサルの時でした。
言うまでもなく真樹さんも東混との共同作業は初めて。
真樹さんは芸大在学中から良き師であり良き理解者であったリンボウ先生こと林望さんと共同作業を続けていたらしい。(後に「鎮魂の賦」となる鎮魂12頌など歌曲やアンサンブル曲を創作してました)
そこに東混からの委嘱を受け、林望さんに作詞を依頼。
出来上がったのが5編からなる組曲『夢の意味』
今回のコン・コン・コンサートでは組曲のタイトルとなった4曲目の「夢の意味」だ・け!をうたうって⁈
こんなこと初めてです。
本来この曲は終曲に向け切れ目なしで演奏するのです。
だから曲を結ぶ為、数小節を新たに書き足してもらいました。
真樹さんありがとう & ゴメンナサイね。

初演以降、大爆発的人気曲に躍り出たこの曲。
オーケストラ版、男声合唱や女声合唱版と数多の合唱団によって幾度となく演奏されてます。
上田真樹さん共に今尚ファン層を拡げてますね。
東混の演奏もCD(共にライヴ録音) で聴けますよ。
初演版
https://www.fontec.co.jp/store/blog/2007/09/EFCD4121.html
オーケストラ版
https://octavia-shop.com/shop/shopdetail.html?brandcode=000000000817&search=%CC%B4%A4%CE%B0%D5%CC%A3&sort=

時を戻して、
当時のことを少し思い出してみましょう。
初演指揮は現東混音楽監督&理事長の山田和樹。
ピアニストは三善晃直系の作曲家新垣隆。
これこそ夢のような共演者でしたね。
ヤマカズさんはこの2年後にブザンソン・コンクールで優勝🥇するわ、
ガッキー (新垣さんのジェニーハイにおけるニックネームね) はゴースト騒動で一躍時の人になるわ👻
(現在は母校桐朋学園の作曲専攻の先生に復帰してます。めでたしめでたし)
今となってはこれも夢か現か幻か、、、。

初演時に使用した手書き譜を開くと曲の途中に真樹さんのサインが残ってます。
そこに書かれているのは
「はーです」
初演に携わった団員の間では今や伝説となったこの「はーです」
初演時は作曲家がリハーサルに立ち会うのが通例で、
この時もご多分にもれずリハーサル場を訪れた真樹さん。
東混メンバーは興味津々の面持ちで待ち受ける。
拍手で迎えられペコリとお辞儀をしてにこやかに着席。
ヤマカズさんのリードでリハーサルが進んでいく。
演奏しながら指揮者のアイコンタクトにも真樹さんは中原中也の「早春の風」よろしく微笑みがえし。
ヤマカズさんは手書き譜にない曲想などを指示しながらうたを磨き上げる。
団員は真樹さんからの感想や指示など期待しつつチラチラ様子を伺いながらうたい続ける。
そしてずいぶん時が流れ、曲の途中(確か調号♭1つ付いてたから3曲目)一旦止まったタイミングで団員の一人が質問をした。
「ここのシの音はベー (♭の付いたシ) ですか?」

真樹さん:譜面を覗き込み聞こえるか聞こえないかの声で
「はーです」
、、、、、、、
団員:(心の声)
「しゃべった!」

みな手書譜のシの場所に♮を書き足し再び曲は進む。
ついぞリハーサル終了の時を迎え、真樹さんは去っていった、、、。
「はーです」という言葉のみ残して。

初顔合わせで唯一真樹さんが発した声「はーです」
サインはその貴重な一言が発せられた部分に書かれてるっていう話(笑)

今じゃ勿論メンバーと気さくにお話してくれますが、あの時は彼女なりに緊張が半端なかったんだろうなぁと真樹さんに会うたび思い出します。

 この組曲は一曲進むにつれ、調性が
Fis-dur A-dur d-moll (唯一♭調号の曲、はーですの曲) A-dur Fis-dur
と一周してるのはよく知られてるね。
1曲目と終曲の Fis-dur は#が6つ。
Fis ?! という驚き&衝撃を受けたけど、後々これが上田節にとって大切な調号
だったことをしる
……かもしれない。
 この調性、うたってみると意外と大変 (特にソプラノ) な思いをした人も多いはず。
聴くは易くうたうは難しってヤツ。
それに比べ4曲目の「夢の意味」は、あたたかい色調で気持ちよくうたえます。
オーケストラ版だと楽器の人もここで少しホッとできるね。

初演時使用した楽譜の最後に載せられた歌詞を見ると、オリジナルの歌詞に作曲されていない一部分があるのがわかります。
出版時にはその部分も省略されてるようですね。
著作の問題もあるからここではこれ以上書かない方が賢明かな。

楽語を日本語で表記してるのがとてもステキです。
各曲冒頭の指示は以下のとおり
「朝あけに」   しずかに 穏やかに
「川沿いの道にて」かろやかに
「歩いて」    粛々と
「夢の意味」   あたたかに なつかしんで
「夢の名残」   静謐に
全曲通してイタリア語による表記もあるけど、日本語をうたうには腑に落ちる方法でとても共感できます。

4曲目の「夢の意味」はまず無伴奏で始まるでしょ。
コンミスささらさんが書いてた「僕・僕」や「早春賦」と同じパターンね。
ここで、
曲を聴いてる人に是非試してもらいたいことがあります。
無伴奏部分を聴いたら次に加わってくるピアノによ〜く耳を澄ましてください。
そしてピアノと一緒に先の歌詞を ” 心の中で ” うたってみて欲しいんです。
 
 いきていることの
 いみを だれもほんとうには
 しらない。

” 心の中で “うたうって、決して新型ウイルスのせいじゃないからね。
これは真樹さんが13年も前から仕掛けてたアイデア(いろんなところに散りばめられてます)
ここで ” 心の中で ” うたうと、うたう人と聴く人、そして書いた人との結びつきをきっと感じられるでしょう。

さて、いつしか私もリンボウ先生が作詞された齢を通り過ぎようとしています。
また、人生を振り返り「夢の意味」を考えてもいいころなのかなぁ?と思ってみたり、みなかったりする今日この頃。
でもね、どんな年代の人もこれまでの、又はこれからの人生をこのうたに寄りかかってみてはどうでしょう。
おもえば、作曲家人生を始めたばかりだった真樹さんが幼少期を振り返り、何十年も先にやってくるであろう人生の終焉からその先の世界まで知性と感性で思想的想いも巡らし、これほど慈愛に満ちた曲が生まれたんですから。

合掌


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