鷹羽弘晃さんに聞いてみました

公演

7月12日の下田の公演後のレセプションの席で、この日のピアニストでもあり、作曲家・指揮者としても活躍されている「鷹羽弘晃さん」とお話をする機会がありました。
なかなかお会いする機会も少ないので、今回をいいチャンスと思い、色々なお話を聞いてみました。

聞き手は東京混声合唱団の渡辺ゆき、好田真理です。


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渡辺ゆき(以下:渡):今日下田の皆さんと「旅」(佐藤眞作曲)を一緒に演奏しましたけれども、ピアノを弾かれていかがでしたか?

鷹羽弘晃(以下:鷹):そうですね。元気をいただいたというか、スケールの大きな演奏が出来た気がするんです。
人数もとてもたくさんいらしたって事もあるんですけど、それだけじゃなくてなんかこう、下田の人々が感じている想いっていうのがすごいピュアに出てきて。
それに東京からやってきた人が少し純化されてっていうのもあれですけど、なんていうか、地元の方とコラボレーションするっていうのがいいなってすごい感じて。
東混の皆さんは素敵なことをやっていらっしゃるっていうっていうのを今日感じましたね。
東混て僕にとっては現代音楽のすごい団体で、東京にいるとやっぱり上野(東京芸大)のイメージがすごい強いので、こうやって地方で地元の合唱団と一緒に演奏できたってのが新しくて、あの、下田の人達とは特別な感じなんだとは思うんですけど(10年で4回共演している)。
でもこういう接し方とか一緒のステージがあるとか、「萬歳流し」とか「幸せなら手をたたこう」とか客席でお客さんに触れ合いながら演奏したり、いろんなステージを拝見できたことがすごいいいなぁって思って。ほんとに心の交流が出来てるし。
なんていうかな、文化って押し売りじゃだめだと思うんですよね。どういう演奏がいいとかそういうことじゃなくて、こう一緒に楽しもうっていう雰囲気を作ってるっていうのが一番感動したっていうか。

渡:「水のいのち」(高田三郎作曲)を弾いて頂きましたが、あの曲は合唱の中で金字塔っていうか、かなりその名曲中の名曲なんです。

鷹:そうなんですよね。普段合唱と一緒に弾く人達にとっては、これやってこれやってこれやってから、「水のいのち」っていうのがきっとあるんだと思うんですけど、でも僕にはそういうのがなかったので大事なレパートリーに向かう覚悟が必要なのかなって思ってたんですけど。
山田さんがさわやかっていうか新しい、我々のジェネレーションであの曲に取り組むんだっていう方向性がはっきりしていて、そこに導かれたっていうか共感できました。

渡:山田さんとは年齢が近いと伺いましたが。

鷹:そうなんです、僕も彼も1979年の早生まれで同い年なので。
今回初めて一緒に演奏したんですけど、ものすごい共感できたし、導かれたっていうか。

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渡:お導きが。

鷹:そうそう。またぜひやりたいし、「水のいのち」の新しい魅力が引き出せたっていうような、まあおこがましいですけど。
今まで見えなかった曲のよさっていうのが見えて。

渡:やっぱり名曲たる所以かな?って思いますよね。何度もやって、どんどん味が出てくるという。

鷹:そうですね。「水のいのち」はひとつじゃないと思うんですよね。いろんな可能性があるので、もっといろんなことを逆に試してみたいような気もしましたし、でも演奏するたびにたぶん毎回違うんだろうなって。そういう感じを大切にしたいと思いました。

渡:鷹羽さんの編曲した「おもちゃのチャチャチャ」の中でアドリブが入りましたけど、どんな感じで弾いていらっしゃるんですか?

鷹:なんかあの、楽しくなっちゃったので(笑)ハイ、入りました。あと何人かの団員の方に「弾いて欲しい」と(初演の際にもアドリブが入った)、マエストロからも「あるんですか?」と言われてたので対応しました(笑)。

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渡:今日の演奏会のアンコールで、下田の皆さんの前で下田節を演奏することができましたが、編曲されていかがでしたか?

鷹:下田節を編曲して欲しいとい依頼があったのは6年くらい前で、その時に1回取材にここに来たんですけど、それからずっとぜひ下田で一緒に演奏したいなと思っていたものですから。今日は実現できて感無量です。

渡:下田を取材に回られたっていうのはどんな感じで?

鷹:下田節の中に出てくる石廊崎はこの辺なのかしら?とか松崎はあっちの方なのかしら?とか。そういう風にフィールドワークをして実際歩いて見たんです。
座敷歌なんですよね、下田節っていうのは。花街で直伝に教わったっていう、実際に歌われていた90歳近い芸妓さん、明治くらいの世代の人の歌を実際に録音して、それをそこからイメージを頂いた部分もありますね。
さらに地元の皆さんの前で今日演奏できたっていうのが嬉しいです。

渡:終演後CD販売のお手伝いをしていたんですけども、下田節のCDすごい売れゆきでしたよ。(以下CD情報)

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『ローレライ』 NEW東京混声合唱団愛唱曲集
指揮:山田和樹
合唱:東京混声合唱団
ピアノ:前田勝則
2012年7月25日発売
2012年2月録音(下田市民文化会館)
制作:Octavia Records  / OVCL00466

鷹:そうなんですか。いや、ほんとにあのCDはいろんな歌が入っている中で、なぜか下田節を入れて頂いたっていうのがすごい僕も嬉しくて。

渡:下田節がああいう風に仕上がった経緯というのは、ええとそのわりと現代風な編曲というか、不思議な感じの編曲かなぁと。

鷹:そうですね。下田節は三味線の伴奏だったりとかわりとシンプルなんですよね。だからそのリズムはそのまま残したかったというか、基本シンプルにはしたかったんですよ。
そうなるとあの、和音が変えられないっていう状況が発生しまして(笑)、同じ響きが多くなっちゃったんで、和音のチェンジというよりは濃淡で勝負するしかなくなって、だんだんきつくなって。でまたどんどん歌詞を増やせという指令が来て。
このネタ使ったあれも使ったみたいないろんなことがことがあって、実を言うと苦心の策なんです。
でもあの1番最初の発想にはその、黒船っていうのがやっぱり下田のキーワードになると思ったので、あの都々逸的な歌詞は絶対入れたいなと。「しーもしーもしーもしーも」っていうのが蒸気が沸いてるようなイメージにもなるし。

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好田:「しーもしーも」っていうのは「シュッシュッシュッ」っていう?

鷹:ちょっとかけてるようなところがあるんです。

好:そうだったんですか!あれしばらくリフレインするんですよね。

渡:みんな次の日とか必ず歌ってるもん(笑)。

好:しばらくね、一年くらいたっても話題になってた(笑)

鷹:ああ、そのね、中毒性になるところも入れとかないとね、とか思って(笑)

渡:今日の下田公演を終えてのお気持ちは?

鷹:はい、もう最高でした!

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お話を終えて渡辺、鷹羽さん、好田の3ショット。
鷹羽さん、ありがとうございました。

鷹羽弘晃プロフィール


2001年桐朋学園大学作曲理論学科卒業。作曲を三瀬和朗、権代敦彦、ピアノをローラン・テシュネ、藤井一興、指揮を小泉ひろし、秋山和慶の各氏に師事。2009年よりパリ・エコール・ノルマル音楽院作曲科に留学。エディット・ルジェ女史に師事。Diplome Supérieur取得。
第68回日本音楽コンクール作曲部門入選。これまで室内楽、声楽を中心にした作品を多数発表。ヴェネツィア・ビエンナーレ、新しい歌を創る会、神奈川芸術文化財団、NHK東京児童合唱団などから委嘱を受け、作品は、桐朋チェロアンサンブル、創る会合唱団、ニューアーツ弦楽四重奏団、アンサンブル・ノマド、日本音楽集団、東京混声合唱団、Ensemble Alternance(フランス)、大井浩明氏、篠崎史子氏、中嶋香氏、和波孝禧氏等、著名な演奏家によって演奏されている。
編曲では、NHK全国学校音楽コンクール中学校の部課題曲「アンジェラ・アキ 手紙」、「いきものがかり Yell」を担当。他に、合唱曲や民謡、室内楽等も手掛ける。
指揮では、在学中、同窓生を中心に「オーケストラ・アニマ」を結成したほか、アンサンブル・ノマド、アンサンブル・コンテンポラリーα、Tokyo Ensemnable Factory、その他多数のアマチュアオーケストラ等に客演。2010年より「アンサンブル室町」の指揮を務める。
ピアノ演奏では、第9回に本室内楽コンクール第1位(ヴィオラとの共演)。2003年「otoの会新作コンサートシリーズ」にて全曲初演リサイタルを行った。2010年には、フランスの音楽祭、Festival de l’Orangerie de Sceaux等に出演、NHK「FMリサイタル」に出演するなど、伴奏や室内楽での活動が多い。
現在、桐朋女子高等学校音楽科(男女共学)教諭、同大学ソルフェージュ非常勤講師。pas de troisのメンバー(ピアノ/作曲)。OTOの会メンバー(作曲)。コンテンポラリーαのメンバー(作曲)。
ホームページ:http://www.hiroaki-takaha.com/ より転載
Facebook : https://www.facebook.com/takahahiroaki


写真:渡邉隆寛
取材:渡辺ゆき、好田真理

このコンサートの詳細 下田市特別演奏会2015

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