ロシアの警察

旅物語

 

バス

宮田圭一

 

 

明けましておめでとうございます!

合唱とはなーんの関係もありませんが、一昨年の4月のモスクワの演奏旅行での出来事をお話ししようと思います。

 

モスクワに到着したその明朝にパスポートを紛失してしまいました。といっても私がぼんやりしていた訳ではないのです。チェックイン時にパスポートをホテルに預け、明朝フロントにパスポートを受け取りにいったら無いと言われ、それっきり。
結局仮パスポートを取るための手続きのため、楽しい観光の時間をこちらに費やす事になったのです、、

噂を聞きつけた団員の方が心配して言葉をかけてくれました。本当にありがとう。特にバスの某先輩からは、その日に起こっていたサンクトペテルブルクでのテロと関係してしているのでは、という深遠なる謀略論を展開して頂きました。

仮パスポートの発行にはパスポートの紛失届けを警察から発行してもらわなければならないとの事。ホテルからは何の謝罪も無かったが、発行のための証人という事で1人の10代くらいのにいちゃんを出してくれました。えらく美形のにいちゃんだった。日本なら大モテ確定。ちなみにこのにいちゃんがホテルでどのようなポストなのかは全く知らされていない。

ガイドさん、マネージャー、 美形のにいちゃん、そして私。4人で警察まで行きました。この警察署、日本のものとはだいぶ異なります。薄汚れた壁面にびっしりと張られた有刺鉄線。警察署というより収容所かな。行ったこと無いけど。
入り口でガイドさんとマネージャーは止められてしまいました。当事者以外は入るな、と。私とにいちゃんのみ、入念なボディチェックの後に入る事を許されたのです。

署内に入るやいなや、どこからか女性の叫び声が聞こえてきました。老婆のものと思われる正気とは思えない叫び声の中、私たちは腰を下ろすものもない空間で何の沙汰も無く小一時間待たされたのです。この時間が一番キツかったです。

ロシアの警察官は上から瞬きもせずに相手を見ます。この眼差しが誰かに似ている。そう。プーチン大統領。長きに渡りロシアを仕切ってる偉大なる大統領プーチン。プーチンはKGBあがりというが、なるほどねえ。

ようやく部屋に通されにいちゃんと警察官2人の話し合いに。私も部屋にいたけど早口のロシア語なんてサッパリだし、警察官も私の事は完無視。警察官が難詰してにいちゃんが言い訳をしているような、そんな様子。大丈夫なのか、と思ったさ。

紛失届けは届けを出してから10日後に発行されるのですが、それじゃ間に合わない。「紛失届けを出しました」という証書を受け取り警察署を後にしました。クレジットカードのレシートのような頼りない紙っ切れでしたが、こいつが帰国のための最大の鍵なのです。にいちゃんは帰りのタクシーで家の近くという所で途中下車。疲れたとの事。そりゃそうだろ。感謝の握手をしてお別れしました。

 

その日の本番も無事終わり、翌朝ロシアの日本大使館に行き、仮パスポートをゲット。本来なら戸籍謄本を現地に送ってもらわなければならないのですが、その手続きは日本に帰ってからで良いと言われました。信用を培ってくれた先人達に感謝感激雨あられです。その信用に背くわけにはいかない。固く約束をしてホテルに帰りました。

ホテルに着いて、居合わせた団員さん達の前で高々と仮パスポートを掲げると大歓声と拍手の渦。良かった良かった。

 

その勢いで徳永さん夫妻と祐子ちゃんとの4人で赤の広場に行きました。これが唯一の観光。とても楽しかったですよ。何というか、パスポートが有る無しで映る景色も違うというか、決して大袈裟ではないですよ。

今年の2月にはフランスとモナコが控えております。皆で無事を祈りましょう。

 

コメント

タイトルとURLをコピーしました