「われは海の子」と「花蓮港」〜『Rebirth』初演に向けて

Takehiko SASAKI

バス
佐々木武彦

先日、台湾東部の花蓮市を訪れた。
ここは戦前戦中日本が台湾を統治していた時代、
最初に日本人の入植が始まった土地である。
今でも当時の日本建築が残っており、
おしゃれなカフェや観光地として活用しているので、
あちこちに日本の空気を感じることができる。

小高い丘の上に立つ『松園別館』もその一つだ。
2階建ての建物の周りには立派な松の木が立ち並んでいる。
ここは日本軍の将校達の社交場として建てられたもので、
『神風特攻隊』は出撃前にここで御神酒を賜い、
遥か南方へと旅立って行ったという。

松園別館

2階のテラスから美しく穏やかな花蓮港を眺めながら、
若き特攻兵達が出撃を目前にして
どんな気持ちでこの風景を眺めていたのか思いを馳せていた。

2015年度の委嘱作品の一つである、三宅悠太氏作曲の『Rebirth』は
「戦争」がテーマである。
幾つかのグループに分かれ、それぞれが違う歌を歌い出し、
やがてカオスへと発展していくこの曲の冒頭、
最初に歌われるのは「われは海の子」だ。

私は今回「われは海の子」を歌うグループを担当することとなった。
練習初日、歌いながら頭に浮かんだのは、
先日見た『松園別館』からの花蓮港の風景だった。
若き特攻兵達も見たであろう海。
思わず胸が締め付けられる気がした。

松園別館から見た花蓮港

花蓮の海は息を呑むほどに青くて美しい。
この海をいつまでも穏やかな気持ちで見つめていたい。
そういう時代がいつまでも続いてほしいと心から願う。

花蓮訪問と『Rebirth』との出会いは全くの偶然なのだが、
時期が重なったことを考えると必然だったのかもしれない。

コメント

タイトルとURLをコピーしました